先日の日曜日は、アリオス大ホールにてボスも通っている津軽三味線教室、孝宮会さんの発表大会でした。
私は当日チケット販売と受付のお手伝いをさせていただきました。
普段引きこもっている率が高いのでとりわけかも知れませんが、たくさんの不特定多数の方とお会いするとやはり少々疲れますね…。
みなさまお疲れさまでした!
さてさて、本日も相続に関するお話をいたしましょう。
タイトルにある『処分行為・背信行為』なのですが、どういった行為がそう取られるのかの前に、まずそれら行為ってどういうタイミングで出てくるものなの?というところから民法の条文を交えながら相続人が行う処分行為・背信行為についてご説明します。
民法921条及び1項、3項にはこう書かれています。
「次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなされる。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 略
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をしたあとであっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」
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大丈夫です!これからしっかりご説明します!
まず、単純承認や限定承認という言葉が出てきましたが、それに関してはこちらをご参照ください。
次に、登場するタイミングですが条文の中にしっかり書かれていますね。
1項に関しては承認等前、3項には「限定承認又は相続の放棄をしたあとであっても」とあります。
処分行為・背信行為か否かが問題となるのはこの相続承認又は放棄のタイミングとなります。
では、どういった行為が処分行為・背信行為とされるのでしょうか。
条文内には「相続財産の全部又は一部を処分した時」「相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき」とありますが、具体的にどういうこと?というのが分かりませんね。
例えば、自分が相続人であることを知った上で、まだ単純承認か限定承認か将又放棄もしない間に被相続人の預貯金を降ろして私的に消費したり、遺産である不動産を売却したりした場合です。
また、限定承認若しくは相続放棄をしたにも関わらず、通帳を隠したり、現金を消費したり、それらの財産があることを知っているのに財産目録に記載しなかったときも単純承認したとみなされてしまいます。
そのあとにただし書きがありますが、放棄後に次順位の相続人が承認したあとにそのような行為をした場合には、相続人ではなくなりますので単純承認をしたことにはなりません。
とはいえ、他の相続人からの大ブーイングは覚悟しましょう。
それでも処分行為や背信行為に当たるのかビミョ~という事例もありますよね。
その中でいくつか判例をご紹介します。
まずは処分行為について。
事例1.家財道具の無償譲渡 → 処分行為に該当しない
ノートパソコンやブラウン管式テレビなどを無償で他人に譲渡した行為は、形見分けのような行為として「処分」とは認められなかった事例。(東京地判平成21年9月30日)
事例2.遺産建物取り壊しと滅失登記 → 処分行為に該当する(東京地判平成21年8月26日)
事例3.仮登記の本登記 → 処分行為に該当しない
相続開始前に死因贈与契約に基づく仮登記がなされている土地につき、相続人が義務の履行として相続開始後に本登記手続をすることは、通常相続債権者を不当に害するということはないと認められた事例。(東京地判平成7年12月25日)
事例4.賃借権確認訴訟の提起 → 処分行為に該当する
被相続人が有していた建物賃借権を自ら相続したとして賃貸人に対し右賃借権が相続人に属することの確認を求める訴訟を提起し、これらを追行した等事実関係があるときに認められた事例。(東京高判平成元年3月27日)
ここからは背信行為の判例を。
事例1.形見分けを超え配分 → 「隠匿」にあたり背信行為に該当する
相続人が被相続人のスーツ、毛皮、コート、絨毯等一定の財産的価値を有する遺品のほとんど全てを自宅に持ち帰った行為は、いわゆる形見分けを超えるものと認められた事例。(東京地判平成12年3月21日)
事例2.債権者の不利益になることを承知の上で財産の消費 → 「私(ひそか)に消費」にあたり背信行為に該当する
限定承認後、相続財産となる土地賃借権を自己の為に利用する場合、その賃料を相続財産となる家屋の売得金で弁済することは私的消費と認められた事例(大判昭和12年2月9日)
事例3.相続財産目録義務のある限定承認で債権者を害する意思で財産の不記載 → 「悪意」とみられ背信行為に該当する
相続財産目録は限定承認の場合作成義務がある。相続債権者及び受遺者の保護をはかるためであり、積極財産と消極財産(相続債務)の双方を明らかにし家庭裁判所に提出しなければならず、消極財産の不記載も、債権者等を害し、積極財産の不記載との間に質的な差があるとは解し難いとされた事例。(最一小判昭和61年3月20日)
まぁ…、色々ありますわね。
基本的に被相続人が使用していた特別高価なものではない一般的なアクセサリーやお洋服等については、弊所も、お客様に対し「形見分け」となるため、遺産分割の対象にしなくても大丈夫な旨をお伝えしております。
もちろんそれらもキッチリと遺産分割協議書に記載することも可能ですし、価値についての不安がある方には質屋などへの鑑定依頼をご提案したりしています。
それでは、今日はこの辺で。
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